パレスチナ女レーサーたちの挑戦
パレスチナ自治区ガザ地区への支援船が妨害されるなか、ヨルダン川西岸地区では、8人の女性レーシングチーム「スピード・シスターズ」がさまざまな壁を突き破ろうとアクセルを踏み込んでいる。
この恐れを知らぬ女性たちは、18歳から39歳までのキリスト教徒とイスラム教徒たち。6月25日に西岸の都市ラマラで行われた競技「スピードテスト」に出場した。このレースは、全米ストックカー・レースNASCARが子供の遊びに思えるほど過酷だ。ヘルメットをかぶった70人の選手が、危険な障害物をよけながら曲がりくねったコースを疾走。何千人ものファンが声援を送った。
鮮やかなネイルを強調するように指穴の開いた手袋でハンドルを握るスピード・シスターズの8人は、観衆の興味を特にかき立てたかもしれない。何しろ彼女たちはスピードテストに出場した初めての女性チームだ。5年前の第1回レースに出場した女性(現在は彼女たちのコーチ)の跡を継いでいる。
スピード・シスターズの多くはレース中、イギリス国旗入りのTシャツを着る。スポンサーである東エルサレムのイギリス領事館に敬意を表すためだ。領事館のスタッフがチームの結成を後押しした。訓練やコーチの費用、車の改造のために約8000ドルを領事館が補助した。すべては、パレスチナ難民が住む西岸地区などの発展を支援する運動の一環だ。
資金援助があっても、彼女たちにとって「ゴール」への道は険しい。共用の車は寄付されたハッチバックで、他選手が乗る高馬力のBMWやメルセデスの車に比べて明らかに見劣りする。それに彼女たちは男性レーサーから懐疑的な目で見られている。
とはいえ、男性が支配する分野での女性の活躍は、保守的なイスラム社会に良い刺激を与えている。高まる政治的対立のせいで社会的平等の実現に焦点が当たりにくい地区においては、なおさらだ。
──シルビー・スタイン
[米国東部時間2010年06月28日(月)16時31分更新]
将軍様がねじ込む補償金のぼったくり度

KCNA-Reuters
韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没事件をめぐり国際社会から非難されたうえ、サッカーのワールドカップ(W杯)でポルトガルに0対7で大敗するという不名誉も相まって、封じられていた「将軍様の怒り」のパンドラの箱が開いてしまったようだ。
朝鮮戦争の開戦60周年を前に、金正日(キム・ジョンイル)総書記は計算機を持ち出し、第二次大戦直後の1945年から2005年までの60年間にアメリカは北朝鮮に甚大なコストを及ぼしたと指摘。人的、物的被害として65兆ドルという多額の「勘定」を突きつけた。
60周年を迎える前日の6月24日にこの数字を発表した朝鮮中央通信は、北朝鮮はアメリカから金銭的な補償を受け取る「正当な権利」があると主張。要求額のほとんどは、アメリカが朝鮮戦争で犯した戦争犯罪をめぐるものだとしている。朝鮮戦争は1950年に北朝鮮が韓国を侵略したことで勃発したというのが国際社会の一般的な見方だが、金正日政権は韓国、その同盟国アメリカ、そして国連加盟国に責任があると主張している。
北の言い分は極めて疑わしいが、アメリカ側にも非はある。当時の米軍部隊は「まず銃撃してから疑う」という方針を実践し、南北朝鮮の市民を無差別に殺害したことは公然の秘密だからだ。
朝鮮中央通信によれば、請求額のうちアメリカの「残虐行為」に対する補償が26兆1000億ドル、60年にわたる経済制裁で生じた被害や殺された市民への補償などが20兆ドル。これでも、実際の被害額よりは低いと北側は主張している。核開発を理由に06年から始まった経済制裁による損失も含まれていない。
本当に問うべきは、仮に北朝鮮がこの巨額の富を手にすることになったら、金正日が何に使うかだ。銀行口座にそれほどの預金があっても、強制労働収容所をより人道的な刑務所に変えたり、飢餓状態にある900万人の国民に物資を供給しようとは考えないだろう。65兆ドルで、太いふちのついた三角形のサングラスやエゴむき出しの「シークレットブーツ」をいくつ買えるか計算しているに違いない。
──シルビー・スタイン
[米国東部時間2010年06月24日(木)16時05分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 25/6/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
奇人カダフィ、イタリアの村を救う
リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ大佐のきてれつな言動は数え切れない。リビアの暦を組み換え、国際テロへの支持を公言し、国連安全保障理事会を「テロ理事会」と呼び、処女のボディガード隊とラクダ1頭を公式行事に同伴させ、国連にスイスという国を「廃止」するよう要求したことすらある。
この狂気じみた誇大妄想症の男が次に何をやらかすのか。驚くべきことに、それは行き当たりばったりの親切な行動だった。カダフィは、イタリアの貧しい小さな村を救うための計画を立てさせた。しかも利他主義と愛情のほかには何の動機もないかのように装っている。
山あいの古い村アントロドーコとカダフィとの運命的な出会いは、いわば一目ぼれだった。昨年、イタリア中部ラクイラで開かれたG8サミット(主要8カ国首脳会議)に出向いた際、カダフィは少し前に発生したマグニチュード6.3の地震でイタリア中央部のインフラが痛んでいることを恐れ、訪問団に迂回するよう命じた。
迂回した結果、経済的に困窮しているアントロドーコを通ることになった。人口2800人のこの町で、カダフィは温かく歓待された。感激のあまり彼はこう言ったという。「あなたがたは私の心の中に入ってきた。私は決して忘れない」
■ホテルやスポーツ施設の建設を約束
帰国するとすぐ、カダフィはローマ駐在のリビア大使ら高官を同町に派遣。高級ホテルやミネラルウォーター工場、スポーツ施設を建設するほか、観光や雇用を支援することを約束した。こうした計画を1週間かけて双方が話し合うことになった。
カダフィの車列がイタリアの名もなき山あいの村で停車し、華やかなリムジンの奥から、床ほどの広さのマントと刑事ドラマ『マイアミ・バイス』ばりのスーツをまとった彼が、アントロドーコを救う正義の味方として登場する──そんな場面を想像するのは難しい。
もっとも、若くて美しい女性500人をローマでの集まりに招待し、イスラム教の経典コーランを全員に渡して改宗させようとしたことも、事前に想像することは難しかった。参りました、大佐。あなたは私たちをまた驚かせてくれましたね。
──シルビー・スタイン
[米国東部時間2010年06月21日(月)15時37分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 23/6/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
フェースブックCEOを死刑にせよ!?

Robert Galbraith-Reuters
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画投稿問題で、フェースブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)を死刑に処すことを求めてパキスタンの弁護士が当局に告発した。
BBCのウルドゥー語サイトをグーグル翻訳したところ、フェースブックが「みんなでムハンマドを描く日」コンテストを掲載したことをめぐり、パキスタンの法務副長官がザッカーバーグらに対する(冒涜罪の)刑事捜査に着手したことが分かった。
パキスタン当局は5月19日、フェースブックへのアクセスを遮断した。フェースブック側が問題のページをパキスタンなど数カ国で削除した後、5月31日にアクセス遮断が解除された。
ザッカーバーグに怒りをぶつけるのは実におかしなことだ。誰もが知る限り、彼自身がムハンマドを描いたわけではない。「ムハンマドを描こう」というアイデアがフェースブック上に現れたのは、ムハンマドが登場するアニメ番組『サウスパーク』の一部をテレビ局が自己検閲して、視聴者を怒らせたためだ。
挑発的な言動で知られる『サウスパーク』の共同制作者トレイ・パーカーとマット・ストーンは、ネット界の寵児ザッカーバーグにお株を奪われて、さぞご不満なことだろう。
──ブライアン・ファン
[米国東部時間2010年06月21日(月)12時03分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 22/6/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
メドベージェフ、BP叩きの迫力

(09年5月、ハバロフスクの石油精製所で)
RIA Novosti-Reuters
アメリカで原油流出事故を起こした英石油メジャーBPは、ロシアのドミトリー・メドベージェフ露大統領の同情を買うこともできなかった。メドベージェフは、かつて政府系の天然ガス・石油大手ガスプロムの会長も務めた同業者なのだが。6月18日付けのウォールストリート・ジャーナル電子版は次のように伝えた。
22日からの初訪米を控えたメドベージェフもまた、メキシコ湾の原油流出事故で巨額の補償責任を負ったBPは「絶滅」、つまり分割される運命かもしれないという見方を示した。
BPの原油産出量の4分の1を占めるロシアでの石油合弁事業を見直すとまでは言わなかったものの、この流出事故は世界中の石油探査プロジェクトを根本的に再考するきっかけになるだろうと語った。
「これは警鐘だ」と、メドベージェフは言った。BPの運命に関しこうも付け加えた。「ロシア政府は当然、BPの将来に関心を持っている。彼らが損失を吸収できることを願う」
以前このブログで指摘したとおり、ロシア政府はBPと関係があるどころの話ではない。ロシア政府は何年も前から、BPとロシアの合弁石油TNK-BPを儲かる輸出ビジネスから締め出そうとしたり、非現実的に高い生産ノルマを課したりと、様々な嫌がらせを行ってきた。そしてそれはしばしば、ガスプロムに儲けさせるためだった。
■オバマはプーチンのアメリカ版?
英エコノミスト誌は、バラク・オバマ米大統領の原油流出に対する対応を批判する記事のなかで、ロシアとメドベージェフの前任者を引き合いに出した。
BPの株価が急落したのは、オバマはウラジーミル・プーチン前ロシア大統領のアメリカ版だと市場が判断したからだ。つまり、企業に嫌がらせをして自分の言うことをきかせるタイプだ。
これはちょっと言い過ぎだろう。オバマはまだ、新興石油会社のトップをシベリア送りにしたわけではないし、外資系石油会社の外国人幹部に対するビザ発給を拒んだこともない。だがBPのトニー・ヘイワードCEO(最高経営責任者)は今ごろきっと、メドベージェフがオバマにおかしな考えを吹き込まないよう祈っていることだろう。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年06月18日(火)15時03分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 21/6/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.


