EUの新大統領と外相はこの2人

EU(欧州連合)の初代大統領(欧州理事会常任議長)にベルギーのヘルマン・ヴァンロンプイ首相が選出された。同じく新設の外相(外交・安全保障上級代表)に選ばれたのが、イギリスの元上院議員で院内総務を務めたキャサリン・アシュトン欧州委員(通商担当)だ。
2人の選出には、ヨーロッパに不可欠な「均整」という考え方が現れている。ヴァンロンプイとアシュトンは男性と女性、小国出身者と大国出身者、そして保守派とリベラル派だ。
さらに一方は予想通りで、もう一方は予想外の人選だった。ヴァンロンプイは数週間前から新大統領の最有力候補に挙げられていた。アシュトンはイギリスとヨーロッパではそれなりに知られているものの、それ以外の地域では知名度が低く、外相就任はちょっとしたサプライズだ。
BBC(英国放送協会)や他のメディアの報道によれば、ゴードン・ブラウン英首相は人選交渉の最終段階までトニー・ブレア元英首相を推薦していたという。しかしドイツを中心とする他の大国はヴァンロンプイ支持に回り、そちらが勝利した。ブラウンなどの社会民主主義派は、その代わりとしてアシュトンの外相就任を後押ししたという。
最終的に、アシュトンのほうがヴァンロンプイ以上に興味深い人選といえる。アシュトンは何千人ものEU官僚と膨大な予算を管理し、EU政策の優先順位について決定権を持つことになる。そのため彼女の外交の仕事は、大統領以上に影響力の強いものになると私は思う。今のところヴァンロンプイがどんなスタッフを抱え、どんな役割を果たすのかはよく分からない。
しかし彼女は適任なのか? 知名度に問題は? 反対する国はないのか? 確かに彼女は通商担当委員という重要な職にあるが、それも就任から1年しか経っていない。こうした疑問への答えと、大統領と外相がどれだけ影響力のある地位なのかは、来月アシュトンとヴァンロンプイが就任したときに明らかになるだろう。
政治ブロガーであり、シンクタンク「アメリカ進歩行動基金センター」のウェブサイト編集者でもあるマット・イグレシアスはこの新チームと、その役職の重要性、さらにアシュトンの称号について優れた解説を行っている(彼女は「レディ・アシュトン」「バロネス・オブ・アップホランド」として知られるが、男爵(バロン)の地位を相続したのではなく、上院議員に就任したときにこの敬称を贈られた)。今後も興味深い情報があればここで書いていきたい。
──アニー・ラウリー
[米国東部時間2009年11月19日(木)14時47分更新]
Reprinted with permission from FP Passport,, 20/11/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
天皇へのお辞儀にいきり立つ爬虫類脳
人間の脳には、生理的欲求や動物的本能をつかさどる「爬虫類脳」と呼ばれる部位があるという学説がある。人類は何百万年にもわたる進化の過程で理性や恥の意識、言葉でのコミュニケーション能力を発達させてきた。だが爬虫類脳には、争うか逃げるかを直感的に判断する「闘争・逃走本能」が今も残っている。
アメリカの大統領が外国の要人にお辞儀をするたびに大騒ぎする人々がいるのも、この爬虫類脳が原因ではないか。彼らの頭の中では即座に「従属vs支配」という対立の引き金が引かれ、お辞儀をした大統領を敵に腹を見せて降参する犬のように感じる。
この手の怒りの波は、およそ半年に一度押し寄せる。バラク・オバマ大統領がサウジアラビアのアブドラ国王にお辞儀をして批判されたのは今年4月。そして今度は11月14日、オバマが日本の天皇にお辞儀をしたことがネット上で騒ぎになっている。ジョージ・W・ブッシュ前大統領がサウジの王族とキスしそうになったときも、訪中したリチャード・ニクソンが毛沢東の詩を引用しながら毛と乾杯したときも、同じような非難が巻き起こった。
政治ブログの「シンク・プログレス」は類似の例を挙げ、誰にでもお辞儀をするドワイト・アイゼンハワーの写真にリンクを張っている。だからといって、アイゼンハワーが従順な指導者だったという声はないだろう。
挨拶をする際に頬にキスをする文化もあれば、握手をする文化もある。そして、お辞儀をする文化もある。それぞれに複雑な文化人類学的背景があるが、ここでは立ち入らない。
重要なのは、「郷に入っては郷に従え」という教訓を理解しているのは、指導者の弱さの表れではないということ。ただしオバマが次に日本を訪れる際には、(両腕を身体の脇に沿わせる)正しいお辞儀の仕方を学んでほしいものだ。
──ボビー・ピアス
[米国東部時間2009年11月16日(月)13時19分更新]
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オバマTシャツ北京で発禁の謎
オバマ大統領の16日からの北京訪問に先立ち、市当局は土産物店に対して、オバマを毛沢東時代の紅衛兵に模したTシャツの販売を禁止した。
昨年オバマが大統領に選ばれて以来、そのTシャツはよく売れてきた。複数の販売業者によると、北京市政府から先週電話があり、この種のTシャツの販売を直ちに中止するよう要請された。しかも検査官が店に来てTシャツが棚から外されたことを確認していったという。
業者らはオバマ訪問後には販売を再開できるとの連絡を受けている。
アメリカの反オバマ集会では、大統領を共産主義者に描いたポスターやシャツは珍しくない。でもあのTシャツを中国人が着ることがいったい何を意味するのか、よく分からない。親オバマなのか反オバマなのか、それともEメール末尾に書く(爆)のようなものでしかないのか。
もう1つ。注目される訪中のさなかに当局がオバマの気分を害さないよう必死になるのは理解できる。ただ、大統領がワシントンのペンシルベニア通りを走るリムジンの窓から少しでも外を見たことがあれば、あのTシャツよりはるかにくだらない自分の似顔絵を見かけたことがあるのではないだろうか。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年11月12日(木)13時18分更新]
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温暖化対策の足を引っ張る米上院
11月7日、土曜日の夜、私は多くのワシントン市民と同じく、自宅のテレビで下院が医療保険制度改革案を審議・採択する様子を見ていた。賛否両論の修正案をめぐる熱い議論、ほぼすべての大物議員による情熱的な演説、そして共和党議員が一人賛成に回った末の僅差での可決。週末の夜の立法プロセスは最高にエキサイティングだった。
この歴史的な採択によって、アメリカは割高で非効率で不完全な医療保険制度の見直しにかつてないほど近づいた。だが、勝利にみえるこの法案通過は、長く細目にわたる立法プロセスの一つのステップにすぎない。
今後は上院が独自の法案を採択し、2つの法案を一本化したものを両院で再び採決する。そこに至るまでには共和党(と元民主党議員で現在は無所属のジョセフ・リーバーマン上院議員)による激しい妨害が予想され、多くの交渉が必要となる。
■公約だった移民法改正も先送り
一方、米議会が医療保険改革に時間を取られているせいで後回しにされた重要法案が2つある。世界各国が進展を待ち望んでいる課題であり、その意味では上院は世界の政治にブレーキをかけている。
1つ目は移民法の改正だ。バラク・オバマ大統領は大統領選の際、就任後1年以内に包括的な移民法改正を成立させると約束していた。ジョージ・W・ブッシュ前大統領が2期目に改革を試みて失敗していることもあり、大胆な公約だったが、オバマはラサラ全米協議会(ヒスパニック系アメリカ人の団体)の支持を取り付け、中米諸国やメキシコ、カナダの賛同も得ていた。
ところが恥ずべきことに、オバマはこの法案の優先順位を下げて問題を棚上げした。議会は議論を始めてさえおらず、法律の立案も委員会での採択も行われていない。こうした状況に、アメリカと国境を接する国はもちろん、世界中に失望が広がっている。
後回しにされている2つ目の課題は、一段と重要度が高い地球温暖化対策だ。下院では今年6月、温室効果ガスの排出権売買を認める「キャップ・アンド・トレード」制を柱とした温暖化対策法案を、ナンシー・ペロシ下院議長が強引に投票にもちこんで可決した。だが、ホワイトハウスと議会は医療保険改革法が成立するまでこの問題を先送りすることにし、法律の成立は来年前半以降にずれ込む見込みだ。
■オバマはコペンハーゲン会議に出られない?
この遅れのために、12月にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)で、アメリカは弱い立場に立たされる。世界中の指導者が集結し、温室効果ガスを削減して人為的な気候災害を防ぐ計画の詳細を詰める場なのに、オバマは議会のせいでその場にいられない可能性がある。
アメリカは、地球温暖化に関する国際的な合意を受け入れるには国内法との整合性が必要だと言い続けてきたが、その国内法の整備ができていない。そのため、オバマはコペンハーゲンの会議に出席しない意向を示している(その後、出席の可能性を示唆)。
しかもアメリカは、温暖化防止に向けた重要な対策の多くを骨抜きにしようとしてきた。オバマ政権もブッシュ政権と同じく、中国を含む主要国のなかで最も強硬に温暖化対策に反対を続けている。
ヨーロッパをはじめとする世界各国も戸惑いを隠せない。訪米したドイツのアンゲラ・メルケル首相は先週、米議会の上下両院合同本会議で温暖化防止問題に「即刻」取り組むよう要請した。だがその訴えも空しく、議員の半数はメルケルの提言に拍手さえしなかった。
私はワシントンが法案の優先順位を変えるべきだとか、医療保険改革よりも温暖化対策や移民法改正を優先すべきだと言っているわけではない。議会の採決を待たずにオバマがアクションを起こすべきだったと言っているのでもない。議会の立法プロセスを迅速化せよと言うつもりさえない(そうなればいいとは常々願っているが)。
私はただ、アメリカは立法に時間がかかることに慣れているが、外国はそうではないということを指摘しているのだ。とくに温暖化対策では、上院は単に国内の法案成立を遅らせているだけでなく、世界がアクションを起こすのも邪魔している。それがアメリカの外交政策にどんな影響を及ぼすのかはまだわからないが。
──アニー・ラウリー
[米国東部時間2009年11月09日(月)14時59分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 11/11/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
「冷戦」南米は軍拡なのに平和

今から20年前の1989年11月9日、ベルリンの壁が崩壊し、ほどなくして冷戦は終結に向かった。だが当時を懐かしんでいるとしたら、「アンデス山脈の冷戦」に目を向けるといい。東西冷戦ほどの緊迫感や核戦争などの悪夢のシナリオも到底あり得ないが、それでもスリルがある。
ベネズエラのウゴ・チャベス大統領がコロンビアとの国境に軍隊を配備するなか、ペルー政府は南米諸国に対して地域安全保障軍の創設に加え、各国に兵器購入の削減を呼びかけている。ペルー政府によると、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領はこの提案に理解を示しており、来週にはコロンビアとパラグアイの両大統領と協議するという。
ペルーの提案の背景には隣国チリに対する不信感があるにせよ、近年、南米諸国の軍事費が急増してきたことも事実。03年から08年にかけて南米の軍事費は倍増し、600億ドルに達したとの推計もある。米政府の推計によると、ブラジル、ベネズエラ、チリ、そしてコロンビアが南米全体の兵器購入額の80%を占めている。ヒラリー・クリントン米国務長官も、南米が軍拡競争に突入することを警戒してきた。
もちろん、専門家がここ数年間指摘してきた通り、最大の懸念は国家間の戦争ではなく、むしろ資源絡みで生じる暴力だ。ノーベル平和賞を受賞したコスタリカのオスカル・アリアス・サンチェス大統領でさえ、兵器購入に反対しつつも、南米地域が今ほど平和だったことはなかったと指摘している。
――ジョルダナ・ティマーマン
[米国東部時間2009年11月09日(月)17時05分更新]
Reprinted with permission from FP Passport, 09/11/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.


