コラム

民主党は自民党の改革に学べ

2010年01月07日(木)15時58分

 鳩山首相が、1月4日に開かれた財界の新年会で「みなさんは供給サイドだが、われわれは需要サイドを中心にやっていきたい」とあいさつし、会場には白けた雰囲気が流れたそうだ。このように自民党政治を「供給サイド」と批判し、民主党は「需要サイド」でやってゆく、という話は菅直人副総理がよく言っており、民主党の「国家戦略」らしいが、意味がよくわからない。

 昨年末にまとめられた新成長戦略(基本方針)も「2020 年までに環境、健康、観光の3分野で100 兆円超の『新たな需要の創造』により雇用を生む」とうたい上げるが、本文を読むと「電力の固定価格買取制度の拡充による再生可能エネルギーの普及」とか「バリアフリー住宅の供給促進」など、昔ながらの供給支援の補助金が並んでいる。こういう政策は麻生内閣のまとめた成長戦略にも入っており、中身はほとんど変わらない。

 自民党の経済政策が公共事業や補助金で「産業振興」を行なうバラマキに片寄っており、それを消費者の目で見直そうという意図は悪くないが、具体的な政策がともなっていない。それは政策の部分を各省庁にまかせているからで、官僚は産業振興しか知らないので、需要サイドといわれても書きようがないのだ。

 実はこういう議論は、今度が初めてではない。1997年に橋本内閣の行政改革会議が出した中間報告では「発展途上国型の産業振興を市場原理を中心に据えた経済運営に転換する」という理念が打ち出されたが、これは官僚の抵抗で骨抜きになり、省庁再編は省庁を丸ごと合併して看板をかけかえただけに終わってしまった。それを部分的に実行したのが、小泉改革だった。「官邸の機能強化」とか「政治主導」というのも橋本内閣が打ち出し、小泉内閣で実施された方針である。

 要するに、いま民主党がやろうとしているような改革は、自民党政権でも試みられたのだ。それなのに鳩山政権は、小泉改革を「市場原理主義」として否定したため「産業振興から市場原理へ」という理念が打ち出せず、「供給から需要へ」という訳のわからないスローガンになってしまった。今度、国家戦略局担当相になる仙谷由人氏は菅氏より柔軟なので、野党時代の経緯にこだわらず、自民党の試みた改革の失敗に学び、その教訓を継承してはどうだろうか。橋本行革の事務局にいた松井孝治氏が、官房副長官として政権の中枢にいるのだから。

プロフィール

池田信夫

経済学者。1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。93年に退職後、国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラ研究所所長。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『アベノミクスの幻想』、『「空気」の構造』、共著に『なぜ世界は不況に陥ったのか』など。池田信夫blogのほか、言論サイトアゴラを主宰。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、イランとの攻撃の応酬続く レバノン南

ビジネス

米PCE価格指数、1月前月比+0.3%・コア+0.

ワールド

26年度予算案が衆院通過、審議時間は大幅減 参院で

ビジネス

英GDP、1月単月は横ばい イラン戦争で先行きに懸
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story