2019年は1889(明治22)年に大日本帝国憲法が発布されて130周年にあたる。非西洋地域で初めて、長続きする立憲政治の体制を創りあげたのは、日本の歴史を二分する大事件である。憲法の内容の評価はともあれ、そこで築かれた国家制度の上に、いまの日本の政治も経済も成り立っている。130年の全体を見わたしながら再検討することは、政治秩序のいまを考える営みへつながってゆく。
目次
【特集】
- 巻頭言苅部 直
- 国家、政党、国民――重心なきトライアングルの政治史清水唯一朗
- 地方社会と明治憲法体制――官僚・政党・町村長池田真歩
- 「天下」の残影――「東アジア」における近代の苦難平野 聡
- 日本が「国家」になったとき――水戸学から主権論へ苅部 直
- 明治前期の「治教」――「国家と宗教」問題を再考する齋藤公太
- 「兵制論」の歴史経験尾原宏之
- 明治憲法体制創造の論理と立憲主義――主権と統治権について嘉戸一将
- 「統治権」という妖怪の徘徊
――明治憲法の制約を受け続ける日本の立憲主義篠田英朗
- 昭和期日本における「国家」と「社会」趙 星銀
【地域は舞台】
- カッカッカー!「奇習」再創造
上山市民俗行事加勢鳥保存会(山形県上山市)東 浩紀
【世界の思潮】
- <私>の物語と同時代性――書くこと、読むこと、訳すこと荒木 浩
- 礼をめぐる文化間対話新居洋子
- レイモン・アロン――フランス国際関係論の源流宮下雄一郎
- 「一九八九年」を想起する細谷雄一
- 経済学のカリスマ的指導者による入門書茂木快治
【時評】
- 両陛下の桃源体験譚芳賀 徹
- 幻の建築・建築の幻高階秀爾
- 「ポスト・トゥルース」の時代と歴史映画渡辺 裕
- その後の焼杉藤森照信
- 兵糧攻め奥本大三郎
- 日本近代の歩みとミシガン大学筒井清輝
- 「ポスト平成」におけるフランチャイズ化の行方待鳥聡史
- 恩師の評伝 服部龍二『高坂正堯』を読む戸部良一
【連載】
- 夢を種蒔く人・厨川白村――最初の音符を奏でるのは大事だ張 競
- 哲学漫想2 ショーペンハウアーの冒険と逡巡
――『意志と表象としての世界』精読山崎正和
- 平成史――元号と時代五百旗頭真
- 世界史の変容・序説――東南アジアへの視線三浦雅士