人は親や出生地を自分では決められない。よってこの地球上の圧倒的大数の人々には国籍選択の機会はない。国籍とは自分の身体のように受け入れざるを得ないのが現実だが、国際結婚、移住、国境変更など様々な理由で、国籍選択を迫られる人々が増えているのは、見逃されがちな事実だ。あらためて国家と国民、そしてその先にある国際秩序の意味を問いたい。
目次
【特集】
- 巻頭言田所昌幸
- 国籍という不条理田所昌幸
- 在日韓国人になる林 晟一
- アメリカ人をやめた私――重国籍の逆説 デイヴィッド・A・ウェルチ
- 韓国人がカナダ人になるということ李 承赫
- カジュアルなカナダ人――我らの軽い市民権とアイデンティティアンドリュー・コーエン
- 英国人にさせられた日本人鈴木章悟
- 割当国籍論の可能性と限界大屋雄裕
- 無国籍を経験して陳 天璽
【写真で読む研究レポート】
- ラタナキリの呪術師――カンボジア北東部の少数民族金子 遊
【地域は舞台】
- 思い出をよみがえらせた人たち 対馬の朝鮮通信使、今と昔
朝鮮通信使行列振興会(長崎県対馬市)阿川尚之
【世界の思潮】
- 大都市で見る満天の星――被災地でエネルギー問題を考える白鳥潤一郎
- 「戦中」のグローバリズム
――ポスト主権の政治空間をめぐる国際秩序構想前田亮介
- 『ラディカル・オーラル・ヒストリー』に対する応答左地亮子
- 夏の日の陰り――サウジ皇太子の試練池内 恵
【時評】
- 京都時代の学生たち――とくに韓国からの一留学生のこと芳賀 徹
- ふたつの故郷を持つ画家藤田嗣治高階秀爾
- 「校歌」以前の校歌?渡辺 裕
- 若手研究者の就活と研究環境に関する日米比較伊藤公一朗
- 「知の新自由主義」の帰結?福間良明
- 天皇家と「万引き家族」のあいだ遠藤正敬
- コンクリートの表現藤森照信
- 遅読術奥本大三郎
【座談会】
- ポストオリンピックの東京と地方御厨 貴+鷲田清一+
福岡伸一+隈 研吾
【連載】
- 夢を種蒔く人・厨川白村――京都と大阪で過ごした幼少年時代張 競
- 哲学漫想1――味覚の現象学山崎正和
- 世界史の変容・序説――『ティラン・ロ・ブラン』と『国性爺合戦』三浦雅士