SNSをはじめとするインターネットの急激な発達は、エリートの裁量行使を監視しつつ下支えしていたマスメディアへの信頼を揺るがせている。経済のグローバル化は、それまで代議制民主主義の下での繁栄を謳歌してきた先進国の人々に、かつてない危機感を抱かせている。エリートが信頼と自律性を失うとき、民意は代議制による封じ込めから脱して、ようやく権力者としての貌を顕わにする。各国においてそれがどのような背景と経緯から生じたのか、何を生み出すのか。
目次
【特集】
- 巻頭言待鳥聡史
- 民意がデモクラシーを脅かすとき――ヨーロッパのポピュリズムと国民投票水島治郎
- アメリカ二大政党政治の中の「トランプ革命」岡山 裕
- フィリピン・ドゥテルテ政権の政治――民主化後の政治発展とエドサ連合高木佑輔
- インターネット時代の中国ポピュリズム阿古智子
- 小池都政における都民と"民意"金井利之
【論考】
- 噓の明治史――五/七/五で噓を切る五百旗頭薫
- よりよき公文書管理制度のために――イギリスとの比較に基づいて奈良岡聰智
- 安保法制は何を後世に残したのか――もうひとつの安倍政権論河野 勝
- 「木」と「森」の区別ができる日韓関係とは
――異なる「歴史物語」に基づく論争を乗り越える李 承赫
- 二十一世紀の「大きな話」、あるいは歴史を動かす蛮勇池内 恵
【地域は舞台】
- 島と人と時の流れと 三重県鳥羽市答志島・神島への旅
島の旅社推進協議会(三重県鳥羽市)阿川尚之
【世界の思潮】
- 會澤正志齋と「国家神道」の間高山大毅
- 憤るアメリカ白人とその政治化マルガリータ・
エステベス・アベ
- 無限無窮(Infinite)の日本語ジェイ・ルービン
- 激変する社会で求められる重厚な物語泉 京鹿
【時評】
- 芭蕉「草臥て」の一句とその仏訳芳賀 徹
- 「切られた首」の崇拝高階秀爾
- 「偽物」の効用――「震災遺構」保存問題の周辺から渡辺 裕
- 焼杉藤森照信
- モモンガの気持ち奥本大三郎
- 文部省教科書『民主主義』と尾高朝雄苅部 直
【対談】
- にわかに信じ難い運命――トマーシュ・セドラーチェクとの対話ミラン・クンデラ+
トマーシュ・セドラーチェク
【往復書簡 correspondence】
- 今度ばかりは違うのか? リベラルデモクラシーの危機ビル・エモット+
ジョナサン・ラウシュ+田所昌幸