科学論の分野も狭隘な専門主義の影響を免れてはいない。福島の事態への科学論者の対応の鈍さが、それを象徴する。このように現実社会から切り離された「科学論」も危機にあるのではないか。科学と社会との関わりや社会における科学の位置付けについて俯瞰的に検討し、科学論の現状に一石を投じたい。
目次
【特集】
- 巻頭言中島秀人
- 「科学」はどこにあるのか?――科学技術政策の「忘れ物」埴岡健一
- 科学論の工学的分析宮野公樹
- 科学技術と自然の未来――オードヒューム『永久運動の夢』を出発点に中島秀人
- 科学とともに未来を拓く――文化としての科学野澤 聡
- 3・11後の科学と民主主義
――子ども・被災者支援法」をめぐる混乱から考える平川秀幸
【論考】
- イギリスの国民投票の波紋ポリーヌ・シュナペール
- EU離脱を決めたイギリス
――帝国へのノスタルジアかリトル・イングランドか池本大輔
- 噓の明治史――循環の観念について五百旗頭薫
- 「報道の自由度ランキング」への違和感佐藤卓己
- いつも見ていた「ジャニーズ」――戦後日本のメディアと家族周東美材
- 日本農業の稚拙化とその背景神門善久
【地域は舞台】
- 時の流れに抗いつつ 何時も元気な由布院 いいぞ!
――自然と文化のまちづくり(大分県由布市)御厨 貴
【時評】
- わがなつかしの「アンフォルメル」芳賀 徹
- 海洋国家ヴェネツィアの栄光と没落高階秀爾
- 熊本城から文化財修復連携システムを飯尾 潤
- 「ガイジン専用」という「おもてなし」田所昌幸
- 日中間の危険な認識ギャップ高原明生
- 「はじまりの歴史」と「終わりの歴史」渡辺 裕
- コルビュジエの建築遺産藤森照信
- AIと贋作奥本大三郎
【世界の思潮】
- 没後五〇年、いま甦る大拙思想の可能性安藤礼二
- 社会主義の残したもの――「宗教」に関わる歴史的実験の帰結滝澤克彦
- 非合理的な民主主義前田健太郎
【往復書簡 correspondence】
- EU離脱後の英国とヨーロッパビル・エモット+田所昌幸
【連載】
- リズムの哲学ノート――第八章 リズムと自由 あるいは哲学と常識山崎正和