2016年は、1916年に合意されたサイクス=ピコ協定から100年の節目にあたる。おりしもサイクス=ピコ協定を基礎にして引かれた中東の国境線と国家の溶解が進み、中東の地域秩序が揺らいでいる。揺らぎは一時的・過渡期的なものなのだろうか。あるいはあってはならない異常事態なのだろうか。むしろ、われわれは近代の歴史を帝国の崩壊、それも繰り返し起こる崩壊として見てみることで、視界が開けるのではないか。
目次
【特集】
- 巻頭言池内 恵
- 現代イスラム政治研究者ジル・ケペルに聞く
――欧州ホームグロウンテロの背景国末憲人
- 溶解する中東の国家、拡散する脅威池田明史
- ロシアにとっての中東――新たなパワーゲームへの関与小泉 悠
- 帝国の落とし子、未承認国家廣瀬陽子
- 清朝の崩潰と中国の近代化岡本隆司
- 古代トルコ系遊牧民の広域秩序齊藤茂雄
- 国民国家の試練――難民問題に苦悩するドイツ森井裕一
【論考】
- 噓の明治史――福地櫻痴の挑戦五百旗頭薫
- 民主化後のミャンマー――期待と現実マリー・ラル
- 沖縄の護国神社宮武実知子
- 領域を超えない民主主義?――広域連携の困難と大阪都構想砂原庸介
【地域は舞台】
- 歴史を今に 弾けよ! ロマンとソロバンの街・松阪
――あいの会「松坂」(三重県松阪市)御厨 貴
【特別企画インタビュー】
- 鋭く感じ、柔らかく考えてきた三十年山崎正和+苅部 直
【特別企画】
- 世界の思潮の把握と日本からの知的発信の試み田所昌幸
- 根源的な思考と時代の省察苅部 直
- 技術至上の現代になぜ文学芸術が大切か張 競
- 歴史の教養と外交の叡智、冷戦後世界を見通す三人の歴史家細谷雄一
- 日本政治論の不在から、自律した政治学に基づく発信へ待鳥聡史
【世界の思潮】
- 日本はどこまでアジアか――東アジア「近世化」論争小川和也
- ゲーム研究の現在――「没入」をめぐる動向吉田 寛
- 第一次世界大戦と日本奈良岡聰智
【時評】
- 渡辺崋山と「徳川の平和」芳賀 徹
- 経済発展は文化の母か高階秀爾
- 「グローバル化以前」の国際化―― 一九六四年東京オリンピック・再論渡辺 裕
- 草取りと日本人藤森照信
- コレクターと眼の老化奥本大三郎
【連載】
- リズムの哲学ノート――第七章 リズムと「私」山崎正和