いまや日本社会が含む多様性は、さまざまな次元が重なりあう、立体的なものになった。さらに遠い過去の史料や言語のあいまからも、「日本文化」の単一性のイメージを裏切るようなものが浮かびあがってくる。クール・ジャパンならぬ「マルティプル・ジャパン」。歴史と現代を通じて、多様なものが共存する「日本」の姿をふりかえってみよう。
目次
【特集】
- 巻頭言苅部 直
- 歴史の中の多様な「性」三橋順子
- 郊外の多文化主義――「同胞」とは誰か谷口功一
- 排除と包摂のせめぎあい――LGBTをめぐる近年の動向東 優子
- エスニック・ビジネスから考える樋口直人
- 「ハーフ」という幻想サンドラ・ヘフェリン
- 在日ムスリム社会のダイナミクス工藤正子
- 「日本」はどのようにして生まれたのか川田順造
- 漢字を飼い慣らす知性――日本的知識人の誕生上野 誠
【論考】
- これからの科学像を求めて野澤 聡
- 日中美意識の比較――方正・円順・自己相似の視点から加藤 徹
【写真で読む研究レポート】
- オリエントの東
――トルコ国立宮殿局所蔵 日本美術工芸品をめぐる物語ジラルデッリ青木美由紀
【世界の思潮】
- 人文研究への願い――ソシュール最期の日々互 盛央
- 豊かなアメリカのパラドクス中澤 渉
- 雑音狂時代――音楽のモダニティとその臨界長門洋平
【時評】
- 光悦・宗達の詩書画三重奏――「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」をめぐって芳賀 徹
- 宇宙的スケールの造形世界高階秀爾
- 京都市の大胆な実験待鳥聡史
- 「ウクライナ」を創るプーチン田所昌幸
- 映画《東京オリンピック》は何を「記録」したか渡辺 裕
- オリンピックと建築家藤森照信
- アリの貴族、または怠惰について奥本大三郎
【座談会】
- 自然科学と哲学の対話大栗博司+山崎正和
+三浦雅士(司会)
【連載】
- リズムの哲学ノート――第六章 リズムと自然科学(後編)
近代科学が哲学に教えるもの山崎正和