事実上の世界言語としての英語の地位は、アメリカの覇権よりもずっと長持ちしそうだ。ちょうどローマ帝国が滅びた後も、ラテン語が長らくヨーロッパの共通言語であったように。だが、その英語で日本人は苦戦の連続だ。教育の英語化を一層推進するのが良いのだろうか。反面、それは母語の言語空間の貧困化を招き、文化的多様性をそこないはしないだろうか。日本語のガラパゴス空間に住む日本人は、いったい英語とどうつきあうべきなのか?
目次
【特集】
- 巻頭言
- 母語は世界言語によって磨かれる――あるチェコ語話者の回想トーマシュ・ユルコヴィッチ
- スーパーグローバル大学のゆくえ――外国人教員「等」の功罪苅谷剛彦
- グローバルイングリッシュでいこう船川淳志
- 数十回目の英語学習発作辛酸なめ子
- 「英語はしゃべれなくていい」は珍説か――英語教育の〝常識〟を考え直す阿部公彦
- 少数言語は復権するか――ソーシャルメディアへの期待上村圭介
- 危機方言はおもしろい!木部暢子
【論考】
- 楽しみとしての科学―― ―八世紀英国の女性と数学三浦伸夫
- 読み解けない時代――なぜリバタリアニズムに退行したかマーク・リラ
- 一九八九年に起きたことは何だったのかピエール・グロセール
- 東アジアの共同知としての「王道」思想――人類と自然の契約王 柯
【地域は舞台】
- 咲かせよ舞台芸術の花、地域から開け世界のパノラマを!
――劇団文芸座(富山県富山市)御厨 貴
【世界の思潮】
- 官僚たたきは正しかったのか――政官関係のもう一つの見方大西 裕
- 香港のストリートから考える福嶋亮大
【時評】
- 「桃源万歳!」展の回想芳賀 徹
- 「写し」と「本歌取り」高階秀爾
- メルケル首相の東京講演細谷雄一
- 土着の記憶を魂に響くリズムで張 競
- 名曲喫茶という社会教育施設渡辺 裕
- 利休と飛び石藤森照信
- 『それから』とピケティ氏奥本大三郎
【連載】
- リズムの哲学ノート――第六章 リズムと自然科学(前編)山崎正和