「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される
<「口の中に毛が生える」という極めて珍しい症例がイタリアで明らかとなり、注目を集めている>
「口の中に毛が生える」という極めて珍しい症例がイタリアで明らかとなった。学術雑誌「オーラルサージェリー・オーラルメディスン・オーラルパソロジー・オーラルラジオロジー」(2020年2月号)にその内容が掲載されている。
歯肉の異常に厚い組織を通り抜ける毛幹が見つかった
2009年、当時19歳であった女性は、伊カンパニア大学ルイージヴァンヴィテッリを受診した。女性の口腔では、上前歯の裏の切歯乳頭部の歯肉溝上皮から伸びるまつげのような毛が確認され、ホルモン検査や超音波診断の結果、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された。
多嚢胞性卵巣症候群では、性ホルモン値の不均衡によって、顔面や身体で過剰に毛が生える「多毛症」がよくみられる。担当医は、外科的処置によって口腔の毛を除去したうえで、性ホルモン値の不均衡を改善するため経口避妊薬を女性に処方し、4ヶ月後には正常に回復した。
しかし、6年後、25歳になった女性は「経口避妊薬の服用を止めたところ、口の中で毛が生えてきた」と訴え、カンパニア大学ルイージヴァンヴィテッリを再び受診した。女性の顎や首にも相当量の毛が生え、口腔でまつげのような茶色の毛が確認された。
担当医が口腔の毛とその下にある組織を採取し、顕微鏡を使って組織を詳しく観察した結果、歯肉の異常に厚い組織を通り抜ける毛幹が見つかった。1年後には、女性の症状がさらに悪化。左右の歯列弓のより広い範囲で毛が生えていた。
若い女性の口腔で確認された初の事例
一連の症状の原因についてはまだ明らかになっていない。女性が経口避妊薬の服用を止めると口腔での発毛が再開したことから、多嚢胞性卵巣症候群に伴う性ホルモン値の不均衡によって歯肉から発毛した可能性も指摘されている。
また、胚発生の段階では、口腔の粘膜組織と皮膚を形成する組織が密接に関連していることから、理論上は、口腔でも発毛する可能性はありうるという。
歯肉から発毛した症例は、1960年以降、わずか5例しか報告されておらず、これらはすべて男性であった。若い女性の口腔で確認された初の事例として、注目を集めている。
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