最新記事
中国経済

欧米企業、「中国事業」への慎重姿勢を崩さず...海外からの投資減少を食い止めたい中国政府の試みは不発か

2024年3月30日(土)11時42分
海外企業の経営者向けフォーラムでの習近平国家主席

中国政府は海外からの直接投資減少に歯止めをかけるため、今週の一連の行事で海外企業の経営者を手厚くもてなしたが、訪中した企業経営者の多くは中国事業の拡大に慎重な姿勢を示した。 セミナーでの中国副主席、26日撮影。(2024年 ロイター/Tingshu Wang/File Photo)

中国政府は海外からの直接投資減少に歯止めをかけるため、今週の一連の行事で海外企業の経営者を手厚くもてなしたが、訪中した企業経営者の多くは中国事業の拡大に慎重な姿勢を示した。

北京で開催された投資フォーラム「インベスト・チャイナ」に出席したトラック大手スカニア・チャイナのマッツ・ハーボーン社長は、中国国有企業の利益を度外視した過剰生産能力について「中国企業も生き残るために利益を出すべきだ」と主張。業界再編が起きれば、サプライチェーンから実力のない企業が淘汰され、自力で市場経済を生き抜ける真剣な企業のみが残るとの認識を示した。

在中国欧州商工会議所のイェンス・エスケルンド会頭は、中国国務院が昨年8月以降、海外投資家の信認回復に向けた対策を少なくとも48件発表したが、その大半が実行に移されていないと指摘。市場アクセスや政府調達、政府高官との面会の点で欧州企業は依然、不利な立場に立たされていると感じていると述べた。

北京で開催された「中国発展フォーラム」では、米国の製薬会社やライフサイエンス企業が中国のデータ規制に対する懸念を表明。データ規制により自社の競争力が低下すると訴えた。

在中国米商工会議所のショーン・ステイン会頭は「問題は、中国側がこうしたメッセージを聞いて解決したいと判断するかどうかだ」と語った。

中国発展フォーラムでは、李強首相が毎年恒例となっている外国企業の最高経営責任者(CEO)らとの懇談会を見送ったが、習近平国家主席は27日、半導体大手クアルコムや投資会社ブラックストーンなど米国企業のCEOのみと会談した。

ベルリンを拠点とする中国研究機関MERICSのチーフエコノミスト、マックス・ツェングレイン氏は「他の投資家は気まずい思いをしただろう。中国がいかに戦略的かつ選択的に国際企業と関わっているかを示している」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中